シリコンバレーから学ぶエンジニアマネージャー論
エンジニアさんの獲得や魅力的に働いてもらう環境作りなどは、スタートアップにとって最重要課題だと考えおります
僕は、組織にとって一番必要なものは「ビジョン」だと考えておりますが、これは概念の話で
実際は、働く環境みたいなものが実質的な最重要項目であると思います
そのなかでも、環境のファクターとして組織を理解してエンジニアを理解することがいい環境を構築できるのではないかと
今回は、課題となるマネジメント論をRethinkDBのファウンダー・Salvaが、エンジニアマネージメント論を “44 engineering management lessons” にまとめていたのでご紹介します
個人的な解釈として、有能なメンバーを仲間にして、常にリスペクトしながら、意見交換は頻繁にしてビジョンを共有し、言うべきものは早期に伝える。ことが重要だな、と感じました
やるべきこと
- 1) 有能なメンバを惹き付け、(報酬/トレーニング等で)報い、コーチし、長期に働いてもらうよう努めること。心配ごとを早めに聞き出し、できるものは対応すること。
- 2) 各人が次に取組むべき一番重要な課題は何かを全員とコミュニケーションすること。
- 3) 開発チーム内で合意に至らなければ、どうすべきか判断する。
- 4) 情報のハブとなること。各メンバが取組んでいる内容を把握し、情報共有することで、当人同士だと気づかないかもしれないポイントを指摘してあげること。
- 5) スケジュールやリリースの調整など全体のサポート。
- 6) 期待される勤務姿勢やパフォーマンスの基準を浸透させる。立場の弱い者をいじめたり、パフォーマンスが最低基準に満たないメンバを解雇すること。
やるべきでないこと
- 7) 自分でバグを修正したり、機能を開発してリリースはしない。意見が割れたときの意思決定ができる程度にコードを書くのはよいが、それ以上はやらない。
- 8) クオリティとボリュームの両方で成果を判断しないこと。ソフトウェアエンジニアは工場の生産ラインではない。メンバの仕事ぶりに対するモニタリングの頻度が多過ぎると、有能な人が寄り付かないか、有能な人に正しいインセンティブを与えていないことになる。
モチベーションとカルチャー
- 9) 採用と解雇の判断、及びチームで起きることの全てはマネージャーの責任である。
- 10) エンジニアは売り手市場。メンバが貴方のチームで働いてくれるのは、貴方を信じているから。有能なメンバが働いてくれるのは光栄であると思うこと。
- 11) 権限は所与のものではない。賢明な判断を続けることで、時間をかけて手にいれられるもの。
- 12) どうしても必要となるまでは自分で意思決定しないこと。チームにアイデアを出させて、自分たちで決めるように仕向けること。
- 13) もちろん、本当に必要であれば決断をする。曖昧な状態がチームの士気を下げる。
- 14) どうしても必要となるまでは、自分でアイデアを持ち出さない。誰もが気兼ねなく提案をできる雰囲気づくりをすること。コードを書いているメンバは、マネージャーよりも必要な情報を持っている。チームに頼れば、よりよい意思決定ができる。
- 15) 適切な意思決定プロセスとメンバとの良好な関係が築ければ、95%は大丈夫。カンバン、スクラムなどのエンジニア組織のためのフレームワークだけで事が本質的に改善されることはない。よいマネージャーが多少ましになって、ダメなマネージャーがやや悪化するだけ。
感情と人にありがちな問題
- 16) マネッジメントというのは企業というカルチャーの中でたまたま名誉な立場に見えてるかもしれないが、単なるスキルセットの一つである。名誉というのは煩わしい存在で、その邪念から逃れることができれば、マネージャーとしての仕事がよくできるようになる。
- 17) マネッジメントは軽蔑の的にされるものだが、その考えは無視すること。マネージャーを役に立たないと思う者は、人の組織のダイナミズムを理解していない。
- 18) 何かがおかしいと思えば、おそらくそれは正しい。周りに流されて、その感覚を忘れてしまわないこと。
- 19) 誰かを批判している自分は、おそらく間違っている。朝起きて、今日もダメなことをしようと思う人はいない。人と会話をすることで、95%の問題は解決できる。
- 20) 人は本当の気持ちをなかなかシェアしてくれないもの。形式ばらない会話を心がけ、どうにか問題点を聞き出し、そして対処すること。
- 21) チームはあなたにリーダシップを求めている。皆が、正しいことだとわかってるけど口にださないことを、勇気をだして言ってみること。
- 22) チームのメンバが気づいていないかもしれないカルチャーの問題を見つけ、解決するために貴方は給与をもらっている。皆が、知るべきなのに気づいていないことを、勇気をだしてはっきり指摘すること。
- 23) 有能な人を雇って、信頼して任せること。パフォーマンスのレビューは四半期に一度か、月次にとどめる。毎日やると、貴方も周りも気が狂いそうになるはず。
- 24) ほとんどの知的な議論も、根底には感情の問題があるはず。それが何か見つけられれば、議論の効率は劇的に改善する。
意見の割れたときと
- 25) 早く判断しすぎないこと。自分が思うよりも、実は間違ってることが多いもの。どのケースでも自分が正しいと確信があっても、皆が意見を述べるまでは待つこと。
- 26) 皆の意見を聞いて、それをうまくまとめることで、「そういう言い方をすべきだったな。」とメンバは思うはず。皆の意見から何をまなぶことができたか、同意できるポイントは何かを挙げ、それから決断を伝えること。
- 27) 一度決めたら、決定事項としてしっかり徹底させる。声の大きい者をなだめるために、皆の時間を浪費させないこと。
- 28) 事態を変えるような新しい情報があれば、議論を再開すること。
- 29) 属人的な理由で反対があったり、考え抜かれた結論に合意できなかったりすると、しこりが続く。
- 30) 「知らなかったよ。」というのが、よくあるコンフリクトの原因。各人と話して、どう感じているか聞いてみて、皆にフィードバックする。それを繰り返す事で、ほとんどの問題は解決する。
- 31) 皆の意見を聞いて、十分な時間をかけてもコンフリクトを解消できない場合は、言いづらいことを伝えるタイミングである。
言いづらいことのコミュニケーション
- 32) 難しいコミュニケーションはなるべく早めのタイミングですること。遅らせるのは、事を悪化させるだけ。
- 33) おそらくこうだろうと決めてかかったり、いきなり結論にいったりしないこと。心の中で相手が悪いと決めつけない。批判や、声を荒げたり、中傷したりはしない。
- 34) non-violent communication(非暴力的なコミュニケーションスタイル)を心がける。人を攻撃せずに、誤りを正すのに最も効果的だと思う。意味の無いありがちなマネッジメント論に聞こえるかもしれないが、本当にこれは効く。
- 35) 自分がどう感じていて、どうしてほしいと思っているか、勇気を持って伝えること。人は相手のもろさに共感できるが、自分の弱さには拒否感を抱くもの。もろさは弱みではない。
- 36) メンバにも同様の礼儀正しさを期待すること。
毅然とした態度
- 37) 人は相手との間合いを測っているものである。いつ引いた態度をとり、いつ強く出るべきかを知ることで、バトルの半分は決する。
- 38) 貴方に対し、度が過ぎた行為があれば、毅然とした態度をとること。さもなくば、貴方のチーム内での立場が崩れる。
- 39) 「それはよくないと自分は思うな。」としっかり伝えるだけで、ほとんどは十分である。
- 40) 笑えないような状況を笑い飛ばしたりしないこと。本当の感情を伝える勇気をもつこと。
- 41) 「それはよくないと自分は思うな。」としっかり何度伝えても、改まることのないメンバは解雇すべきである。
- 42) 正常な感覚の持ち主であれば、人を解雇するのは本当に辛いことなので、やらなくて済むための理由探しをしてしまうもの。「うちの会社にフィットしないのではないか。」と継続的に感じるのであれば、自分の考えが正しいと勇気を持つべきである。
- 43) 周りのプレッシャーに負けて、自分がそうだと思わない決断をしないように。その責任は押しつけられることになる。決断はマネージャーの責任である。
- 44) 自分を信じること。馬上で不格好だと思うなら、騎兵隊を率いるにはふさわしくない。